「自分が思うよりも、ひとつ上のテンションで演じています」

今回の南極アイス役は、今までの名取さんのイメージとは大きく異なる役ですね。初めて台本を読んだときの感想は?

すごく面白いと思いました。ただ、『京都地検の女』や『法医学教室の事件ファイル』に出ているときでしたし、しかも、『法医学』とは同じ時期に撮影だったので、両方いっぺんにやるとなったら、キャラがかぶらないようにするのは大変だな、と。『京都地検』や『法医学』では検事役や医者役で、ずっとシリアスな芝居をしてたので、アイスになったとたんにみんながドン引きしないように、違うキャラを演じようと思ったんです。だから、ビジュアル的にも全然違う役にしたいという気持ちがありました。

アイスには、通販番組内で見せるハイテンションな顔と、社内で見せる厳しい顔がありますね。

アイスもコールセンターのみんなと同じ契約社員ですから、数字が悪くなればいつでも首を切られるっていう現実を知っています。局長たちは体制の側ですから、テレビショッピングがダメなら他の部署に飛ばされるだけで済むわけです。その両方をわかっているのがアイスなんじゃないかなと思いますね。だから、売り上げを伸ばすためについ暴走してしまうこともあるけれど、一方では、利益に関してものすごく敏感で現実的な大人でもある。結局、会社の売り上げが上がらなければ、契約社員も本社の正社員も、みんなの給料が出ないわけでしょう? 仕事の厳しさも立場の弱い人間の気持ちもぜんぶ分かっているアイスの考え方は、ある意味では本当の正義でもあるんですよね。そういうふうに思って演じているので、アイスの二面性にも違和感はないですね。利益を追求しながらも、弱い立場のこともわかっているというところで、自分の中では整合性があります。

第2話や第3話の最後では、コールセンターの声に動かされて売り方を変える場面もありました。

そうですね。お客様に対してアドリブをかましたり、雰囲気で買ってもらおうとしたり、売り上げを伸ばそうとはしちゃうんだけど、商業倫理として理念のあるお仕事をしてるから、決してインチキを売ろうとは思わないんです。だから、クールなようだけど、エコとか世の中のこともわかっていて、お客様の目線で考えようっていうところはありますね。利益とのバランスで、「どっちなの?」って迷ったときには、「懐中電灯は一人一個よ」って言ったり、「ワケありワケなし仲良しタラコ」にしたり、アイスなりに工夫を考えるんです。そういう意味で、とても頭が良くて、厳しい世の中を勝ち抜いていってる女だと思いますよ。一度会社に入ってしまえば、働かなくても給料はもらえますっていう本社の正社員とちがいますよね。

だからこそ、小泉孝太郎さん演じる都倉渉に厳しく当たるんでしょうか?

大体気に入らないでしょ?(笑)いい大学出てコネで入ってきて、さして働きもしないのに、なんでこいつが40万も給料取るの?って(笑)。そう思うのは、とても自然な心理だと思います。育ちが良くて笑顔が意味なくさわやかな感じが、アイスにとってはなんだかムシが好かなくて、飛ばしちゃうわけです。苦労なくそこそこの人生を歩んできて、これで一生安泰かと思ってる気楽な正社員に対して一刺ししておくって感じ。たたき上げ側の人間として、「あんた、世の中、そんなに甘いもんじゃないわよ。地を這うようにしてがんばってる現場を見て来なさい」みたいなね。
都倉も、飛ばされてる間に、自分の立場も彼女も三上に取られちゃうし、いろんなものをなくしていくんですけど、なくした分だけ新しいものを得て成長していくっていうのが面白いですよね。わたしと小泉くんは撮影場所が離れちゃってるから、全然会えないんですけど、昨日、ひさしぶりに会ったんです。都倉が「お客様相談窓口は必要です!」って言い切るのを見て、南極アイスが「ほう」って感心するシーンは、成長した都倉を見ている感じがして面白かったですよ。

南極アイス役の難しさはなんでしょう?

わたしは本当に商品を売るつもりで演じてるんですけど、名取じゃなくて、アイスがそう思ってるわけだから、自分が思うテンションよりも、ひとつ上にいかなきゃいけないんですよね。自分だったらこうはしないけど、アイスだからここまでやろうという。大体、なんかやった後に、「バッカじゃないの」って必ず言われるんで、「それなら、あんたたちが「バッカじゃないの」っていいやすいようにやってあげるわよ」みたいな(笑)。そのために、テンションをもっと上げてかなきゃいけないのは大変ですね。
でも、実際に撮ってみるとカットになったりもするしね(笑)。できあがったものをつないでみると、時間が長くてはみ出ちゃうことがあるんですよ。コールセンターだとか、他のシーンのお芝居をきっちり使おうと思うと、どうしても全体の時間をオーバーするから、テレビショッピングのところを切らなきゃいけなくなる。でも、あまりにも面白いところがいっぱいで切れないシーンがたくさんあるんですよ。毎回本当に面白いし、けっこうコアなファンが多くて、「今期、一番面白いね」って友だちからメールがいっぱい来てますし。夏休みの楽しい林間学校みたいな気持ちで、自分もすごく楽しんでやってます。(了)