「正直なところ、自分がこうなりたいって思う理想のラインには、なかなか到達できません」

青山響子役を演じてみて感想はいかがですか?

本当に面白くて、今までに出会ったことのないような役柄です。少しエキセントリックなところもあるんですが、人間的なところもあって、濃度がすごく濃い人間。表現する方法がいくらでもあるんです。そこがすごく面白くもあるし、難しくもある。正直なところ、自分がこうなりたいって思う理想のラインには、なかなか到達できません。

どういう感情表現が難しいですか?

感情をどこまで見せるのか、見せないのか、というところですよね。過去が鎧のように彼女を覆っていて、クレーム処理をしているとき以外は心を閉じています。そういうある種の無意識な防衛本能をどこまで解くのかが難しいですね。コールセンターの人には心は許してはいるんだけれど、決して自分のことを多くは語らず、そこにいながらにしていないような人物。実在しているようでもありつつ、「こんな人、ありえない」っていうふうにも見せたい。この二面性の共存が、わたしが考える響子の理想像なんです。

そんな響子役を演じる中で、印象に残ったシーンを教えてください。

第5話で、都倉が落ち込み心にすき間ができた時に、なんとなくコールセンターに電話をかけてしまうシーンがありました。電話に出た響子は、相手が都倉であることはわかっても、都倉だからといって特別な対応はしないんです。たぶん、だれが電話してきても、彼女はこういうふうに対応をするんだろうなっていう、クレームに対する響子の信念が、分かりやすく出ていて。彼女にとっては通常の行動なんですけど、都倉にとっては救いになるっていうところがうまくかみあっていて、演じていて面白いなと思いました。

響子は、クレームにはしっかり対応できるのに、生身のコミュニケーションは不器用ですよね。

視野が広いようで狭い人間なんです。遠くまでよく見えるけど狭いというか(笑)。だから、ひとつのクレームのことを考えているときは、そのことしか考えられないし、その間に誰か入ってきても見ないようにしているんでしょうね。でも、そこに都倉という存在が入ってきたことによって、少し変わってきたんだと思います。最初はあきれて見ているんだけれども、彼は彼なりに考えて動いていることがわかって、共感する部分もあったりする。不器用ながらも気持ちで当たっていこうという都倉に接して、徐々に視野が広がってきて、まわりの人との関係性も変わってきたと感じています。

都倉渉役の小泉さんとの共演の感想はいかがですか?

小泉さんはいつもニコニコして、さわやか選手権があったら優勝まちがいなしっていう人です(笑)。ここまで「さわやか」っていう言葉を体現した人、わたしは初めて見たんですよ。でも、そこに対してまったく気負ったところもなく、本当にナチュラルな人なので、その存在感がすごいなと思いますね。だから、ヘマをしたり、ダメなところがある役を演じても、かわいらしく見えて応援してやりたい気持ちになるんですよ。そういうところは、小泉さんならではだと思います。小泉さんの持っている人柄の良さが都倉渉というキャラクターと交わると、口では「まったくもう、しっかりしろ、都倉!」って言っても、心の底では「がんばれ、都倉!」って思っちゃうんですよね。

コールセンターのみなさんとの共演はいかがですか?

一緒にいて本当になごむ現場です。撮影が大変だったりしても、いつも心穏やかでいられるので、本当に助かっています。「なんかこの空気知ってるな、なんだろう?」って思ったら、親戚の集まりみたいな感じがするって気づいたんですよ(笑)。ちょっと変な言い方ですけど、血縁関係みたいなものを薄く感じるくらい仲が良いんです。年齢層もそれぞれなのに、だれと一緒にいても楽しめて面白い。本当にいい現場で、集中してものづくりできる環境だと思いますね。

いよいよ第9話と最終話を残すのみですが、ミムラさんが考えるみどころを教えてください。

まず、10話を通して描かれてきた都倉の成長がどこに着陸するのか、ですね。響子自身に関して言うと、いろいろあるんですけど、ネタばらしになってしまうので、あんまり言えません(笑)。ただ、コールセンターにはいろんな人間関係があって、そこにかけられてきた電話でのやりとりも、かけがえのないものだったということが、はっきり見えてくる回だと思います。今までの事件を推理していくかのようなテイストも面白かったんですけど、ちょっと趣向が変わって、新しい要素が入ってきます。響子も、ワケありだったそのワケが見えてきますので、楽しみにしていてください。(了)